投票日になると「投票に行ってきました!」という文章と同時に候補者の名前を記入した投票用紙の写真の投稿がよく見られます。今回は、投票所での投票用紙の撮影は問題ないのかを議論します。
はじめに結論は?
結論から述べますと、公職選挙法には投票用紙の撮影を禁止する規定が設けられていません。ただし、各地域の選挙管理委員会で独自に規制している場合がほとんどです。また、実際にSNSへの投稿によってその投票が無効になったという実例はないというのが結論です。
投票所内で禁止される行為とは
公職選挙法で投票所内で規制する箇所を引用します。
投票所において演説討論をし若しくはけ ん 騒にわたり又は投票に関し協議若しくは勧誘をし、その他投票所の秩序をみだす者があるときは、投票管理者は、これを制止し、命に従わないときは投票所外に退出せしめることができる。(第六十条)
この箇所では、投票所内の秩序を乱す行為を禁止しています。実際に携帯電話の使用が秩序を乱す行為とされ、投票所内での携帯電話の使用を禁止することが多いと考えられます。しかし、一般的に考えて投票用紙の撮影が投票所内の秩序を乱すとは考えにくいです。ただし並外れたシャッター音や電話などについては、他人に心理的影響を与える控える必要があると考えます。
すべての投票所で撮影を禁止していない
実際に投票所に行くと分かりますが、「携帯電話の使用禁止」「撮影禁止」という張り紙がある場合があります。このような張り紙がある場合は撮影することを控えるべきです。上記でも引用したように、投票所の管理者が選挙人を退場できるために、投票所内で禁止している行為を行うと退出させられる可能性があります。
一方で、携帯電話の使用について張り紙が一切ない投票所もあります。このような場合、投票用紙の撮影を行ってもよいという認識で大丈夫です。
これは各地域の選挙管理委員会によって規制が異なるので注意が必要です。
投票用紙の撮影を禁止する別の理由
投票所で投票用紙の撮影を禁止する理由として、上記で述べた【秩序をみだす行為】の他に【脅迫】や【投票日は選挙運動の禁止】という観点もあります。
脅迫という観点では、勤めている会社で「○○候補に投票するように」と言われたことはありませんか?これだけで終わればいいものの、実際に投票したのかを確認するために投票用紙の撮影をし、実際に投票したのかを証拠として見せるようにと言われると、自分の意思で投票が出来なくなってしまいます。このような行為を防ぐためにも、投票用紙の撮影を禁止しています。
次に投票日は選挙運動の禁止という点に注目します。ここでは期日前投票は除きます。選挙運動とは、特定の候補者に対しての投票行為呼びかける行為です。投票日当日にこのような行為をすることは、公職選挙法で禁止されています(公選法129条)。投票日に投票用紙の撮影をしSNS等に投稿することは、間接的に特定の候補者を広めることになるため公職選挙法違反の可能性があります。
まとめ
投票用紙の撮影については、公職選挙法で明確に禁止されているわけではありませんが、各地域の選挙管理委員会が定めるルールに従うことが重要です。投票所内での撮影は、他の有権者のプライバシーや投票の秘密を守るために控えるのが賢明です。また、SNS上で「投票権の撮影をしてSNSに投稿しよう!」といった呼びかけを見かけますが、投票日にこのような行為をすることは選挙運動とみなされる可能性があるため慎重な行動が求められます。
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